祈りをテーマにしよう、と決めた今年の初め。
そんな時に出会ったのが『時禱書(じとうしょ)』でした。
キリスト教徒が定時に祈りを捧げるときに用いた賛美歌や
祈りの言葉などが書かれた本。
その本からタイトルを付けたのですが
本展では「祈りの時」という意味として捉えることにしました。
さて、「祈りの時」と決めたのはいいのですが
目には見えないものを表現することは予想以上に困難な作業で
形にするにも、何を取っ掛かりにしてよいものか頭を抱えてしまい
すっかり迷宮の森に入ってしまいました。
そこで範囲を狭め、自分の中にある祈りを改めて考えてみようと
余計なものをハケで払いのけるように掘り進めていくと
故郷沖縄の「自然崇拝」と「キリスト教」のふたつが
原風景として形を現しました。
蝋燭の灯り
ひざまずき祈る修道僧の姿
今はもうなくなってしまった儀礼
自然を崇める思想
「自然崇拝」と「キリスト教」という
相反するふたつのモチーフから感じたことや
思い浮かぶ場面を描いてみることにしよう
こうして何とか迷宮の森から脱出しました。
祈りを考えてゆくと、自然と人との関係が見えてきます。
人が遥か昔に地面や壁に絵を描き
文字を持っていなかった頃から今もなお続いている大切な時。
祈ることで自らの弱さを知り、謙虚に生きることを思い出します。
時の作り出す錆の力を拝借しながらこのテーマを描くことも
なんだか偶然ではないような気がしています。
今回、わたしの手では抱えきれず
取りこぼしたものもたくさんあったと思います。
それでも、観てくださる方々と共有できる思いが
そこにあることを願って描きました。
会期:11月6日(水)〜30日(土)
9:00〜17:00
定休日:日曜・祝日
会場:八雲茶寮
目黒区八雲三丁目4番7号
03-5731-1620
どうぞご高覧くださいませ。