Photo :《 らくがき 》
毛布をテント代わりにして、その中で初めて星野道夫さんの本を読んだ
毎晩、遠いアラスカの地を星野さんと共に旅して
美しく厳しい大自然の中を懸命に生き抜くさまざまな生き物たちを
胸をドキドキさせながら目撃した
旅を終えて、静かに本を閉じてから天井を眺め
ああ、そうかと納得したことがある
星野さんの綴る旅の記録の中には
わたしが描く上で、テーマとして長く追い求めてきた「生と死」が
生き生きと平等に描かれていた
描きたくてもどうしてもうまく描けなかったテーマ
どうして?って、いつも自分に腹が立っていたし、途方にも暮れていたけど
星野さんの生き方に触れて、自分が描けない理由が良くわかった
当然だと思った
机の前にじっと座っていても決して感じることはできない
突然自分の中にある厚い壁が崩れ始めて
大きな穴がぽっかりと空き、そこから眩しい光が差し込んできた
星野さんから、何かとてつもなく大きなものを見せられたような気がして
右往左往している自分がとても小さく感じたけど
不思議とさっぱりとした気分だった
まばゆい陽射しの下、気がついたら
長いことつっこんだままだった手をようやくポケットから出していた